どんな課題がある?
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認知症高齢者の増加
認知症の症状として、物忘れや性格の変化、妄想などがありますが、家族の心理的・肉体的な負担が大きな症状の一つとして「徘徊行動」があります。
中には徘徊したまま戻ってこずに行方不明になってしまうこともあり、伊賀市でも毎年認知症による徘徊を原因とする行方不明者が発生しています。 -
全国データでも行方不明者の約4分の
1が認知症を原因とするもので、
高齢者に限ればほとんどの
行方不明者が認知症患者でした。行方不明者は、残念ながら亡くなった状態で見つかることも少なくありません。
それだけでなく、行方不明になったまま長期間見つからないこともあり、そうしたときのご家族・ご近所の方の心労は計り知れません。
当事者エピソード

夫が行方不明になってしまった
10年間たったいまも、
夫の帰りを待ち続けています。
夫は長く教員を勤め、温厚な人柄で慕われていましたが、私と二人で田舎暮らしを楽しむために早期退職し、伊賀への移住を決めました。
夫は、70歳を過ぎてから時々物忘れも出てきましたが、散歩を日課にするなど健康にも気遣っていました。
ある日、私は散歩に出かけた夫がいつもの時間に帰ってこないことに気付き、心配になって近所を探しはじめました。日が暮れて不安な気持ちが募ってきた時に、通りがかった近所の人が声をかけてくれました。私は状況を説明しながら気丈に振舞っているつもりでしたが、思いがけず泣き崩れ、すがる思いで助けを求めていました。
その後、近所や消防団のみなさんによって山や草むら、川なども含めて必死の捜索活動が1週間続きましたが、夫が見つかることはありませんでした。
私は毎日、夫がいないと気づいた時にすぐに周りに助けを求めなかった自分を責め続けました。
夫婦で過ごした家を手放すことも考えましたが、「いつか夫が帰ってくるかもしれない。」と、この土地を離れることは出来ませんでした。行方不明になってから10年目となる日、自分の気持ちに区切りをつけるために、死亡届を提出しました。今は、夫がどのような状態であっても帰ってきてほしい・・・と諦めながらも、私はまだ心のどこかで「ただいま」と、笑顔で帰ってくる夫の姿を待ち続けています。

ご近所さんの後悔
こんなに近くで発見されるなんて・・・
あの時、一声かけていれば…
Bさん(90歳女性)は、民生委員やボランティア活動など熱心に参加されたり、野菜作りも上手でご近所の人に配ったり、みんなから親しまれていました。
でも、ご主人が亡くなった頃から急にふさぎ込んでしまって、お付き合いが無くなって。私たちも、Bさんの人が変わったようでなんだか声をかけづらくなってしまってね・・・
隣県に住んでいる息子が時々帰っているようでしたけど、本人は畑仕事以外で外に出ている様子もありませんでした。最近は、時々ゴミの日を間違えることがあったので、みんなで気にかけていたんですけど…
行方不明になった日はちょうどいきいきサロンがあって、公民館の前を歩いているところを地域の人が何人かが見かけたのですが、いつものように畑に向かっていると思って声をかけなかったそうです。その晩、偶然帰ってきた息子さんから、「母が見当たらないのですが、知りませんか?」と訪ねてこられました。ご近所で手分けして探しましたが、見つからなかったので、警察に通報しました。夜遅かったのでその日は捜索できず、翌朝からみんなで地区を超えて探しましたが、見つかりませんでした。
行方不明になってから一か月後、公民館から約50m離れた休耕中の畑を草刈りに来た地域の人が、倒れているBさんを発見しました。まさかこんな近くで発見されるとは思わず、地域の人はみな、驚きと悲しみに包まれました。「あの時、なぜ徘徊だと気付けなかったのだろう。」「もし一声かけていたら、このようなことにはならなかったかもしれない」と悔やまれてなりません。


悲しい思いをするのは、この人たちだけでしょうか。
あなたにもいつ、このようなことが起こるか分かりません。
そこで私たちは、今後このような家族の苦しみや地域の悲しみを生むことがないよう、
「認知症を原因とした行方不明による死亡者をゼロ」を目指して、活動をはじめています。
みなさんも今からできることが、あります。
10年後、安心して認知症になれる地域にしませんか?
課題解決のための
私たちの取り組み
認知症による行方不明者が発生してしまう原因を
分析し、原因別に対策を考えました。
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本人
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認知症の発症
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認知症の治療の遅れ
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福祉サービスを利用していない
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危険な箇所に入ってしまう
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身寄りがなく、徘徊に気づく人がいない
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家族
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通報が遅れてしまう
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周囲に知られたくない
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徘徊に気づかない
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危機意識が低い
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介護疲れがある
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地域
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近所の人が気づかない
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気づいても徘徊を止められない
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捜索の手順が決まっていない
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家族にのみ責任を負わせる風潮
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近所付き合いの希薄化
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認知症に対する知識不足
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どう防ぐ?
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認知症になっても病院に通えるように
通院付添サービス
交通手段を確保できなかったり、付き添う人もいないので、認知症と診断されても、継続的に治療を続けることが出来ない人がいます。その課題を解決するために実施します。
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いつ家から出ても大丈夫!
(新)ひとり歩き時早期
通報事業家(敷地)から出たことがすぐにわかる対策を取っている家庭を増やすために、実施します。またひとり歩き(徘徊)で家に帰ってこない状況が続いていても、通報を周囲に相談せずに、家族のみで長時間探すことがないように実施します。
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声をかけて一緒に歩きます!
(新)おさんぽ事業
ひとり歩き(徘徊)をして迷うことがないように、それに付き添い一緒に散歩するために実施します。
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認知症について正しく理解しよう
認知症サポーター養成講座
認知症の病状や地域の認知症高齢者の情報を理解し、近所の人に関心を持ってもらうことや、家族の認知症によるひとり歩き(徘徊)での行方不明などが恥ずかしくて通報したくないと思う人を減らすために実施します。
認知症サポーターとして登録し、ひとり歩き(徘徊)での行方不明になった方がいる場合には捜索活動も連携してすすめていきます。
たとえば、このような取り組みを
行っています
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生活習慣病の予防
認知症は生活習慣と密接な関係にあり、生活習慣病は認知症の発症リスクを高めます。適切な食事・運動・休養・ストレス減少・禁酒・禁煙等、生活習慣病を防ぐための啓発や講座を開催します。
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認知症サポーターの養成
認知症は治療が必要であることを知ってもらえるように、地域のみなさんが学べる機会をつくります。また、介護認定や福祉職からの支援を受けていない人が、ご本人に必要なサービスにつながるようにサポートします。
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認知症高齢者家族のサポート事業
認知症高齢者を介護しているご家族をサポートするため、認知症に関する研修を受けた「やすらぎ支援員」がお宅を訪問し、認知症高齢者の見守りや話し相手を行います。
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見守り支え合いマップの作成支援
地域で普段からコミュニケーションをとるなど、つながりのある人を増やし、ひとり歩きの時に近所の人が気付いて声をかけることができるよう、見守り支え合いマップの作成を支援します。
これから、このような取り組みを
行う予定です
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ひとり歩き時早期通報事業
家(敷地)から出たことがすぐにわかる対策を取っている家庭を増やすために、実施します。またひとり歩き(徘徊)で家に帰ってこない状況が続いていても、通報を周囲にせずに、家族のみで長時間探すことがないように実施します。
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「おさんぽ(パトロールウォーキング)事業」
第三者から見ると、「目的もなく歩いている(徘徊)」のように見えるひとり歩きは、ご本人にとっては理由も目的もあることが多くあります。ひとり歩きに付き添って一緒に散歩することで、行方不明にならないようにします。
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徘徊捜索マニュアルの作成
認知症の方が行方不明になったとき、できるだけ早く発見することができるよう、地域と関係機関で共通の捜索手順や判断基準を整備します。
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認知症サポーターとの連携捜索事業
認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」と連携し、ひとり歩き(徘徊)で行方不明になった人の捜索活動に一緒に取り組みます。


悲しい出来事は、あなたの力で止められる
地域の課題解決のために
あなたにもできることがあります
ボランティアで支える
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地域交流支援
健康や趣味活動、人との交流などを目的として、地域では様々な活動が行われています。ふれあい・いきいきサロンやラジオ体操などでの活動があります。
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地域食堂支援
孤立や孤食に向けた取り組みである地域食堂(子ども食堂)や高齢者への配食サービスの活動では、調理、配達、準備などの活動があります。
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高齢者支援
少子高齢化が進む中、一人暮らし高齢者も多くなってきています。電球交換や草刈り、清掃、話し相手など、助け合いの活動があります。
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外国人支援
日本語での会話が困難であることや情報が届きにくい外国人住民を支える、やさしい日本語や通訳、翻訳などの活動があります。