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活動レポート

Report

年齢が理由で入居NG!?シニア世代の住まい探しを拒む壁

高齢者に起こる入居拒否の現実

 「高齢者になると賃貸住宅を借りるのが難しくなる」という現実があることをご存知でしょうか。高齢者の住宅難民に関する実態調査※によれば、高齢者の約4人に1人(関東では約3人に1人)が「年齢を理由に賃貸住宅への入居を拒否された」と回答しており、約8人に1人は5回以上断られた経験があります。高齢者が新たに部屋を探す場合、大病をしたり、仕事を失って収入が途絶える可能性が若い人よりも多く、親きょうだいも亡くなっていたり、高齢などで保証人や緊急連絡先が見つかりにくく、新たな賃貸物件を借りる際に必要な条件を整えられないことが多くあります。また、認知症になった場合などは火事やトラブルが起こりやすい、本人が部屋で亡くなった場合は孤独死に繋がる可能性も高いなどの高齢だからこそのリスクもあり、高齢者は賃貸住宅契約のハードルが高い傾向にあります。高齢者のみの世帯や単身高齢者世帯の数は増え、2030年には800万世帯に迫る見通しであり、この社会問題への関心が急速に高まっています。

高齢者に起こる入居拒否の現実

※「高齢者の住宅難民に関する実態調査」株式会社R652023

高齢になるほど増える入居拒否される理由

 高齢者が賃貸物件を借りにくい理由を詳しくみてみると、1つ目は賃貸契約の際には保証人・緊急連絡先を必要とする不動産会社や大家が大半であり、高齢になってくると家族がいない、または保証人を引き受けてくれる人がいない場合が多く、保証人・緊急連絡先が必要な場合は難航することが多々あります。高齢者にとって、保証人や緊急連絡先を確保するのは大きなハードルです。また、さらに家賃の安い物件を希望となると、住まい探しがさらに大きく難航する現実があります。

高齢になるほど増える入居拒否される理由

 2つ目は、賃貸物件を借りるときのほとんどの場合に必須となる「債務保証会社の審査」に通らないことがあります。近年は審査に厳しい債務保証会社が増え、高齢者というだけで最初から審査対象外になっていたり、審査してもらえても通らないケースが多くあります。多くの高齢者は年金を主な収入源としていますが、これが賃貸の審査基準(特に家賃収入比率)を満たせない場合もあります。ある不動産会社に相談した時は、「債務保証会社の審査をかけるには対象が75歳まで」と言われ、「どうしても入居希望があるなら子どもの名義なら審査に通る可能性が高くなる」と言われたものの、入居希望者には子どもがおられなかったため、それ以上入居に向けた相談を進めることが出来ず、新たな住まいを見つけることもできませんでした。

 3つ目は、貸主が孤独死による事故物件化を懸念する背景があります。現在、孤独死は大きな社会問題となっており、孤独死による遺品(残置物)の引き取り手がいないこともあります。そのため、第三者による遺品整理が必要になるほか、発見が遅れれば、室内の汚れや異臭を取り除く特殊清掃等の原状回復が必要になり、コストもかかります。加えて孤独死が「事故物件」にあたると考える貸主や管理会社が多く、通常の賃貸物件に比べて入居者に敬遠されるため、家賃や契約条件で譲歩せざるをえない状況となっています。事故物件になってしまうと次の入居者が決まりづらくなることも多く、家賃を下げなければならないケースもあります。

 4つ目は近隣トラブルを起こすのではという懸念も、高齢者が賃貸物件を借りにくい理由の一つとなっています。認知症が進み、火の元の管理がおろそかになり火事を引き起こし、ほかの部屋の住人に迷惑をかけ、部屋に損害を生じさせるのではと貸主さんは心配するようです。処理対応や金銭面で大きな負担が発生した事例もあり、高齢者と賃貸借契約を結ぶことに拒否感を示す不動産会社や大家もいるようです。こういった面倒を避けたいということから高齢者の賃貸物件契約を嫌がられて入居が決まらないことが多くあります。

 

 空き家や賃貸物件の空きがあるにも関わらず、高齢という理由で借れないことが多くあるのが現代社会の現状となっています。

アパートの取り壊しで住む場所をなくした男性

 山本 明さん(75歳)男性。一人暮らしで、結婚歴はありません。両親は10年前に他界、姉が一人いましたが昨年病気で亡くなり、身寄りはいません。

 明さんは若い時、料理職人(調理師)として働き、全国各地を転々として生活してきました。腰の痛みもあり、60歳で仕事を辞め、生まれ育った伊賀に戻ってきました。車の免許がなかったのでなるべく駅やスーパーが近くにある街中のアパートに住みました。
 数年住んでいたある日、突然大家から「アパートの老朽化もあり、アパートを取り壊すことになったので立ち退いて欲しい」と言われ、長年住んだアパートの取り壊しで住まいを失う危機に直面しました。近所の不動産会社に相談しましたが、年齢的に物件を借りるのは難しい、連絡する先がないと管理会社の審査に通せず、携帯電話は必須と言われました。別の不動産会社では、連絡先となる人が必要と言われ、何人かの友人に頼みましたが、難色を示され頼める人がおらず途方に暮れていました。

困った山本さんは、友人からの紹介で、伊賀市社会福祉協議会の居住支援窓口に来所、現在の生活状況や引っ越し先の希望として、金額や場所、間取りなど聞き取りを行いました。緊急連絡先がなかったことから住居探しは難航しましたが、数社にわたる不動産会社とやりとりを続け、なんとか希望の住居に引っ越しをすることができました。山本さんは、住む場所がやっと見つかり、大変喜んでおられました。

アパートの取り壊しで住む場所をなくした男性

個人の問題にせず、社会全体で対策が求められる住まいの確保問題

 よくテレビなどで、「賃貸派・持ち家派」など取り上げられることがありますが、どちらにも一長一短があり、どちらが良いのか人それぞれの価値観があります。しかし高齢者になってくると賃貸住宅を借りるには、保証会社・保証人など、入居するために必要となる様々な条件をクリアしていかないと借りることが難しく、なかには高齢というだけで最後まで新たな住まいが見つからないことも多くあります。

 最近では高齢者だけではなく、初期費用・毎月の賃貸料などの問題で低所得者、生活困窮者、ひとり親世帯等でも賃貸物件を探すのに希望する物件が見つかりにくかったり、なかには外国人という理由だけで最初から入居拒否をされたというケースもあります。住まいが見つけられない問題においては、高齢者だけでなく、多くの人が直面している問題であり、個人個人の問題とするには課題も非常に複雑でもあることから、公的機関や福祉関係者、不動産会社等が連携し、正面から対策を行なっていくことが求められています。
個人の問題にせず、社会全体で対策が求められる住まいの確保問題

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