生活困窮に陥る方を救う活動
くらし支援課 生活困窮者自立支援事業担当 武藤 誠介 |
地元に貢献できるような仕事を
生活困窮者やひきこもりの方への支援を行う部署で働いています。定年退職するまでは、某情報通信会社で技術職として働いていました。民間企業ですから、利益追求のための仕事をずっと行ってきたのですが、定年後の第2の人生は地元に貢献できるような分野で仕事をしたいと思い、伊賀市社協の門を叩き、福祉の世界に飛び込みました。
所持金が100円という相談者も
社協の相談窓口には、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、失業して経済的に切迫し、なかには所持金が100円という状況で来所される方もいます。
ある派遣会社で働いていた方は、3か月契約で働いていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって雇止めとなり、「明日には派遣会社の寮から出ていってくれ」と言われ、仕事がなくなり、住む場所もなくなり、お金もない、という状況で社協の窓口に相談に来られました。そういった相談が、新型コロナウイルス感染拡大以降に急増しています。
その方は、失業するまでは15万円の給料から家賃・昼食代・前借分などを引かれて、手取り7万円という状況でした。そこから電気代や携帯代、食費を差し引くと、ぎりぎりの生活で貯金は全くありませんでした。来所される派遣労働者の現状として、そういった状況の方が多いように思います。
失業や収入減少等による生活再建のため、生活資金をお貸しする事業があるのですが、県の社会福祉協議会に申請してから、貸付金がご本人に振り込まれるには、最低でも数日かかります。その間の食糧確保が難しい場合は、地域の支援者からの寄付による食糧の提供や、フードバンクの食糧手配を行うこととなります。宿泊場所がない方には、伊賀市社協の独自事業「緊急一時宿泊助成事業」で、住まいを確保するまでホテル等に泊まってもらう支援も行います。
相談に来られる生活困窮世帯のなかには、小さなお子さんがいらっしゃることもあります。その場合には、おむつを用意したりもします。カップラーメンを渡してもお湯が沸かせないという方や、電気・ガスが止められている方もおられ、ガスが止まっている家庭にはカセットコンロの貸出も行います。
病気になっているのに、病院にいけないとの相談がありました。相談を受けている中で、国民健康保険の滞納していることが判明しました。一緒に市役所に行き、その滞納を分割で支払うお手伝いも行います。
退職した後、なかなか再就職できない人がいる
高校や大学を卒業後、働いていた会社で人間関係がうまくいかなかったり、精神的身体的にしんどくなったりといった理由から退職し、再就職を試みるもなかなかうまくいかないという方も来所されます。
ある相談者は、高校卒業後3年勤めていた企業で同僚との人間関係に悩み、周囲の勧めもあり退職したそうです。退職後2カ月ほどして再就職を目指し動き出しましたがなかなかうまくいかず、退職してから4年間、試験を受けても通らないということを繰り返すうちに自己喪失状態になったそうです。ご本人は「周囲の目もあり、あせっていたことがうまくいかなった原因だったのではないか」と話されていました。
就職できたときの喜びの電話はわたしも嬉しくなってしまう
社協では、まずはご本人の仕事に関することだけではなく、日常生活の困りごとなど、幅広く相談に乗ります。その上で、生活や就労についての支援計画を作成します。長期で働いていなかった方の場合、いきなり一般企業で働くことが難しい場合が多く、就労訓練として、基本的な生活習慣や職業人として必要なマナー、コミュニケーション能力など、就労に必要な力をつけた上で就職を目指します。企業見学や就労体験なども働くことのイメージを持ってもらうことに有効です。
最初、相談に来られたときにはうつむいて、不安げな表情だった方が、就職できた時には、決定通知が来てすぐに喜びの電話をくださったり、ご両親から喜びの連絡をいただけることもあります。自分自身のことのように嬉しくなってしまいます。
誰一人取り残されることのない支援
「生活が苦しくなってどこに頼ることもできない。」伊賀市社協は、そんな人が頼れる機関となればと思っています。いろいろな相談機関を回って、最後に伊賀市社協に来られるという方もいらっしゃいます。
私たちは、相談者の生活が少しでもよくなればと、行政や学校、地域、NPO、企業等と連携して支援を行っていきます。個別支援を通して得た課題から、地域全体で解決していくまちづくりが求められています。社協だけでできることは限られていますが、多くの方々のご協力をいただきながら、孤立化させない、あなたの応援団を作ることを通して、その人らしい社会参加の方法をその人と共に考えながら、誰一人取り残されることのない支援をしたいと思います。