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活動レポート

Report

「大丈夫だと思っていた」命を脅かす健康リスク

こんなはずじゃなかった。突然の病気の宣告から過酷な老後生活が始まる方が増えている。要介護の認定者数は全国で666万人。この20年間で約2.9倍に膨れ上がっている。実際に病気となった方々に話を伺った。

気づかないうちに蝕まれた身体

 「突然、左足が腫れているような感覚に襲われました。」そう話す市内在住の田中玲子さん(仮名 55歳)。田中さんは、5年にわたり母親の介護を行い、葬儀を終えた直後のことだった。葬儀が終わり親戚も帰っていき、やれやれとようやく肩の荷が下りた矢先、突然左足が腫れているような感覚があり、うまく動かせなくなったという。

 

 見た目にはまったく右足と変わらないように見えるが、明らかにいつもと違うという自覚があった。家にいた夫からも「おかしいんとちゃうか?すぐ病院に行こう。」と言われ、近くの病院に連れていってもらった。

 

主治医の先生に診察してもらったところ、真剣な表情で「紹介状を書きます。これはすぐに大きな病院で見てもらった方がいい。」と言われた。突然のことで何が何やらという状況でした。自分に何が起こっているのか、何とも言えない不安が襲ってきた。

 

 すぐに夫に市民病院へ連れて行ってもらい検査を受けたところ、「脳梗塞ですね。すぐにバイパス手術が必要です。入院していただくことになりますので準備をお願いします。」と担当医からの説明を受けた。突然のことに驚き、何とか気持ちを落ち着かせ、夫に着替えなどを家に取りに行ってもらった。

 

 6時間に及ぶ手術が終わり、入院生活が始まった。「入院中になぜ脳梗塞になってしまったのか振り返っていたのですが、介護の疲れがたまっていたんですかね。その疲れが葬儀の時にピークになったのかなと。疲れていると、甘いものをつい食べすぎちゃって・・・。気づかないうちに身体に無理をさせていたのですね。退院したらお医者さんが言うように、少しは運動もしなくては・・・。」と肩を落とした。

 また、田中さんは、平日の日中は一人で過ごしている時間が多いという。今回、たまたま夫の仕事が休みで病院に連れていってもらえたが、もし一人の時に脳梗塞になったらと不安な日々を送っていると言います。

 

気づかないうちに蝕まれた身体

身をもって知ったリスク

 「朝食を食べた直後に、急に胸が締め付けられるような激痛がありました。」そう話してくれたのは橋本忠雄さん(仮名 61歳)。橋本さんは伊賀市内の企業を部長職で定年退職したばかりで、これまでの仕事によるプレッシャーから解放された反動もあり、第二の人生は家でゆっくりしたいと、趣味の囲碁は打つものの、ほとんどの時間を自宅でテレビを観て過ごすことが多かったという。

 

 食生活も揚げ物が大好きという橋本さん。退職後1年で6kg太ったという。元々小太りであった橋本さんも「このままではちょっとまずいぞ」と思い始めた矢先のことであった。朝、起きて朝食を食べた直後、突然橋本さんは胸の激痛に襲われた。「その時は必死でしたね。わたしは離婚してから一人暮らしで、救急車を何とか呼ぶことができたのは運が良かったと思ってます。」

 

 搬送先の病院で告げられた病名は心筋梗塞。幸いなことに直ぐに病院で治療を受けることができたため大事には至らなかったが、治療が遅れていたら命はなかったという。

 

 「食生活の乱れや運動不足がこのような病気を引き起こすことを、身をもって知りました。本当に苦しかったです。ドクターからは家に独りでいることもリスクだと言われました。これからは、趣味などの仲間を見つけることができればと思います。」

身をもって知ったリスク

“孤独”も健康のリスク

 健康寿命を短くしている原因は、1位が睡眠不足、3位が運動不足、では2位は何か。意外に思うかもしれないが、“孤独”が健康のリスクとして2位に挙がっている。伊賀市社会福祉協議会 地域福祉コーディネーターの恒岡は、「一人暮らしの方のほうが、死亡リスクは1.32倍も高まると言われています。」と話す。

 

 健康で過ごすための研究が世界中で進んでいる。明るく前向きな生き方、生きがいや趣味があり、友達やサークル活動、スポーツなど積極的に取り組んでいる人ほど長く健康で過ごしていることが分かってきている。

 

 「リスクを下げるためには、楽しんで参加できる何かを見つけることが大切です。いきなりがっつり参加するのはハードルが高いですが、少しずつで大丈夫なので長く続けていくことが良いかと思います。」と恒岡は話している。

 

 誰しも歳を取れば、身体の衰えが出てくるものである。認知症の症状も出てくるかもしれない。少しでも長く健康で過ごすために、つながることのできる居場所や機会が必要とされている。

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