増える相続トラブル、少ない遺産でもトラブルが発生している現状
伊賀市社協の相談窓口には、近頃、相続トラブルに関する相談が増えています。裁判所の司法統計では、令和3年までの15年間で、約4,000件もの相続トラブルが増加している現状があります。
裁判所 司法統計サイトより作成
また、司法統計を見ていくと、1,000万円以下の相続トラブルが33%に上っています。この1,000万円という金額は、土地建物を含めた遺産総額となっているので、かなりの少額でもトラブルが多発していることがわかります。「相続トラブルはお金持ちの問題」という認識は、改める必要がありそうです。
裁判所 司法統計サイトより作成
まさか、30年間住み続けた家を追い出されそうになろうとは…。
伊賀市在住のAさん(50代女性)は、夫と二人で5年間にわたり、義父の介護をしていました。昨年、夫が心筋梗塞で亡くなった後1年間は、Aさんが一人で義父の介護をしていましたが、義父も先日亡くなり、亡くなった夫の実家に一人残されてしまいました。
義父のお葬式の後、別居している義弟から「実家を売却したいと思う」と話を切り出されたそうです。Aさんに子どもはないため、民法上は義父からの遺産相続権はなく、相続を受けるのは、義弟一人です。
田舎の家なので、土地建物を含めても500万円にもならないのですが、義弟は、例え僅かな相続財産でも、現金化して相続を受けたいと思ったようです。
この家は、嫁いでから30年間住み続けた夫との思い出がたくさん詰まった家です。近所の友人もたくさんいます。Aさんはこの家で一人になったという寂しい思いと、やっと介護から解放され、これからはこの家で仏様を守りながら過ごしていくつもりでした。それなのに、義弟の意見で家を追い出されるというのは納得できないけれど、どうすることもできないと悩んでおられました。
ご相談をお伺いして、Aさんには相続法が改正され、特別寄与料という制度があり、献身的に介護などを行っていた場合、相続人にその分を請求できるようになったことをお伝えしました。Aさんは、「そのような手段もあるのですね」と、少し希望を持っていただいたご様子でした。
誰もが起こり得る相続トラブルを少なくするために
相続トラブルを防ぐには、生前からの準備が大切です。遺産総額が少ないケースでも多くのトラブルが起こっています。「私には財産がないから大丈夫」「子どもたちは仲がいいから、揉め事の心配はない」と安易に考えていないでしょうか。
上記のケースにおいても、義父は長年献身的に介護されてきたAさんに対して感謝の念を抱いていたことでしょう。その義父の思いを相続人の方々と共有してもらえていたら、また、遺言書という形で残してくれていたら、結果は違っていたのではないかもしれません。
伊賀市社会福祉協議会では、こうしたトラブルを少しでも減らしていけるように、ホームページでの情報発信や終活セミナーなど活動していきます。