第8章 参考資料
近年の水害記録
太平洋西部の北緯5゜〜15゜付近に発生した熱帯性低気圧のうち、域内の最大風速が17m/s以上のものを台風と呼んでいる。特に、7月から10月にかけて発生した台風は発達しながら日本に接近し、前線を刺激して大雨を降らせたり、時には上陸して直接、暴風雨をもたらす。また、台風の通過により、高潮が発生し、沿岸地域に被害を与えることがある。台風は年平均約30個発生し、このうち数多くの台風が日本に影響を及ぼし、年平均3個が上陸している。
(1)明治(1868)以降、日本で発生した主要な台風・豪雨等
( )は死者・行方不明者数
発生年月 被災地域
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896.9.6〜7
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明治29年9月洪水[東北、関東以西](364以上)
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1910.8.6〜15
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明治43年8月洪水[東北、関東、中部](1379)
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1934.9.20〜22
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室戸台風[本州、四国、九州](3006)
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1938.6.27〜7.5
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昭和13年洪水[中部、近畿(特に兵庫)](933)
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1943.9.20
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台風20号豪雨[西日本(特に島根)](990)
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1945.9.17〜18
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枕崎台風[関東、中部以西(特に広島)](3756)
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1947.9.13〜15
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カスリン台風[東京、埼玉](1930)
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1948.9.15〜17
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アイオン台風[東北](838)
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1949.6.15〜23
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デラ台風[九州、四国、本州](468)
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1949.8.31〜9.1
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キティ台風[中部、関東、東北、北海道](160)
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1950.9.3〜4
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ジェーン台風[関東、九州を除く全国](509)
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1951.10.13〜15
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ルース台風[九州、四国、本州](943)
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1953.6.23〜30
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昭和28年6月豪雨[北九州](1013)
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1953.7.16〜25
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昭和28年7月豪雨[東北以西](1015)
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1954.9.25〜27
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洞爺丸台風[北海道、四国(1761)
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1957.7.25〜28
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諫早水害[九州(特に諫早川)](992)
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1958.9.26〜27
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狩野川台風[近畿以東(特に静岡)](1175)
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1959.9.26〜27
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伊勢湾台風[九州を除く全国(5041)
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1961.6.24〜74
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昭和36年6月豪雨[九州から東北](357)
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1961.9.15〜17
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第2室戸台風[全国](202)
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1966.9.17〜25
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台風24,26号[静岡、宮城、福島](314)
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1967.7.7〜10
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昭和42年7月豪雨[中部以西](374)
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1967.8.26〜29
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羽越水害[新潟、山形](142)
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1972.7.3〜13
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昭和47年7月豪雨[北九州、島根、広島](458)
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1974.5.29〜8.1
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台風8号[全国](143)
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1976.9.7〜14
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台風17号[全国](169)
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1979.7.7〜8
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由比豪雨[東海](143)
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1982.7.5〜8.3
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昭和57年7月豪雨(長崎豪雨)[関西以西](345)
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1983.5.24〜7.28
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昭和58年7月豪雨(山陰豪雨)[東北、中部、中国](117)
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1993.7.31〜9.5
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平成5年8月豪雨・台風13号(鹿児島豪雨)[全国](141)
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(2)台風の事例
@カスリン台風(1947年)
カスリン台風は、関東地方に昭和時代以降で、最大の水害をもたらした。特に、東京、埼玉では被害が大きく、日本最大の流域を誇る利根川では、下流域でも4日間に延べ200mm以上、上流域では460mm近くの大雨となった。利根
川本川及び支川では、既往の洪水の最大水位を上回り、本川で2か所、支川渡良瀬川で1か所の破堤をみるに至った。このため、越流水は、首都東京まで南下し、葛飾・江戸川両区を濁流の海と化した。この台風による被害は、死者・行方不明者1,
930人、負傷者1,751人、田畑被害292,
455ha、建物被害394,041戸等であった。
A伊勢湾台風(1959年)
伊勢湾台風は、台風災害としては未曾有の大災害をもたらし、特に台風進路の東側にあたった低地部の人口密集地域では史上空前の惨状を呈した。台風の接近により、潮位が上昇するとともに、波浪が海岸へ来襲し、各所の堤防が決壊した。そのため、海抜0メートル以下の低地域では、大災害が生じた。台風による被害は、死者・行方不明者5,041人、負傷者38,921人、家屋全半壊149,187戸、床上・床下浸水363,616戸、田畑流失埋没30,764ha、道路損壊12,135か所、橘梁破損4,160か所、堤防決壊5,760か所、山岳崩7,231か所等であり、被災者1,532,954人、被害額5千数百億〜6千億円であった。
2.豪雨
毎年6月上旬から7月中旬にかけて、北方のオホーツク海高気圧と南方の小笠原高気圧との間に前線ができ、これが日本列島付近に停滞するため、本州以南の各地で雨や曇の日が続く。この前線による長期間の降雨を梅雨と呼んでいる。梅雨末期には豪雨が起き易く、地盤は長雨にさらされ緩んでいるため、これにより大災害がしばしば見られる。
@長崎豪雨(1982年)
長崎豪雨は、低気圧からのびる梅雨前線による局地的集中豪雨であった。雨足が強まった午後7時から4時間で376mmの豪雨があり、満潮による海水の逆流と重なって被害がなお大きくなった。山間の各地で土石流やがけ崩れが多発し、市内の商店・住宅等の密集する平地部が全域冠水し、最も深いところで2.7mにも達した。また、市内を流れる中島川に架けられている石橋群14のうち6橋が全壊して流失した。豪雨による長崎県内の主な被害は、死者・行方不明者304人、負傷者805人、家屋全半壊1,538戸、床上・床下浸水37,106戸、田畑流失埋没860ha、道路破損4,969か所、橋梁全半壊116か所等であり、被害総額約3千億円であった。
A鹿児島豪雨(1993年)
1993年8月の集中豪雨と8〜9月の台風13号により、7月31日から8月7日にかけて鹿児島県で総降水量が800mmを超えるなどし、全国で広範囲にわたり、大規模な被害が生じた。これらの豪雨によって、鹿児島市の甲突川の氾濫や土石流のJR日豊線列車の直撃など、各地で河川が氾濫、土石流が発生し、道路冠水等による交通の遮断や、電気・水道等のライフラインの長期的寸断・停止等、地域住民の生活に著しい支障を来した。相次ぐ豪雨により、がけ崩れによるものなど死者・行方不明者141名、浸水など被災家屋約150,400戸を数え、公共土木施設及び農林水産業関係の被害額は、合わせて約1兆円に上った。鹿児島県では、シラスという雨に弱い地盤の脆さも手伝い、記録的な大災害となった。
河川に関する一般知識
水系図

放水道、早水路
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