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第6章 安全管理
活動上の安全を確保するための準備

1.ボランティアへの安全活動の徹底
 活動前に、安全に活動を進めるためのオリエンテーションを行うことが大切です。活動にはどのような危険が潜んでいるのか、またその危険を回避するための方法は何か、そして活動の目的と効果はどのようなものかを事前に伝えるように心がけましょう。そのために次のようなことを行うと良いでしょう。
(1)3分間ミーティングの実施
 ボランティアに活動場所、活動の内容などを説明するだけでなく、安全に活動を行うためのミーティングを持つことが大切です。活動前の3分程度の時間でも十分です。
[3分間ミーティングの進行手順]

これから始める活動内容の説明

どのような活動を誰と、どこで、何時間程行うのかを説明します。

使用する道具の説明

道具の正しい使い方、してはいけない使い方、活動後の道具の整頓方法を説明します。

活動の中に潜む危険要因の説明

「どこの足場がぬかるんでいる。」「通路が狭い。」「家の中に段差がある。」など、これから始める活動現場の環境や使用する道具に関して、危険な要因を具体的に挙げて、注意を促します。

トラブル時の対処法の説明

活動中に何らかのトラブルの発生や、けがをした場合の報告先と報告すべき内容を伝えます。自分達だけでは絶対に解決しないように注意しておきます。また緊急でとりあえず自分達で対応しなければならない場合であっても、事後に必ず報告するように注意します。

質疑応答 

説明した内容についての質問を受け付け、説明した内容が理解されているかを確認しましょう。

 (2)活動目的と効果を伝える
 ボランティアが行う活動の目的は何か、その活動がどのような効果を上げるのかについて説明することが大切です。活動の内容によっては、効果の見えにくいものや専門技能を持つ作業員の支援が必要なものもあります。活動目的や効果の説明を省くと、活動に対するボランティアのやる気を削いでしまい、活動の効率が悪くなりボランティアの危険行動を引き起こすことにつながります。
2.装備の点検
 活動にふさわしい装備であるかどうかの点検を行います。
 点検項目例

長靴を履いているか。長靴の底はすり減っていないか。

 

ゴム手袋または軍手を着用しているか。

 

マスクと帽子を着用しているか(必要に応じてヘルメットも含む)。

 

服装が活動場所の天候や活動内容に合っているか。

 

タオルを携行しているか。

予防対策(安全活動)
 活動は多くの場合一定の場所にとどまって行うとは限られておらず、工場内における作業の安全管理のようにシステムとして構築されたものではありません。したがって、安全活動といっても「その場にある資材で」「その場の判断で」行わざるを得ないものであり、その意味では災害時のボランティアセンターやチームリーダーの指導力が強く求められるといっても良いでしょう。
 活動に携わるボランティアの安全管理を行うにあたっては、
  a.活動環境および活動内容に潜む危険を事前に予測し、その危険を取り除く策を講じます。 
  b.ボランティアが危険な行動をとらないように指導または支援します。
  c.危険行動を誘発させないよう、ボランティアの健康状態に気を配ります。
 以上の3つの視点から取り組むことが重要です。
1.活動環境
(1)活動条件

活動場所は安全か

造成地、山岳地帯、ゼロメートル地帯、海岸・河岸地帯など災害が再発する可能性の高い場所
で活動する場合、早めに避難できる態勢を作っておきます。

 

倒壊や落下の危険のある家屋のそば、断線した電線のそばでの活動はしないようにします。

活動をする場所が薄暗くて見にくいことはないか

必要な照度の確保が難しければ照明設備を使います。

夜間作業は暗くて危険なので原則として行いません。

 騒音が激しく聞きにくいことはないか

2人以上のチームで活動をする場合、かけ合う声が聞き取りにくいとけがや事故を引き起こすことが
あります

大きな音がする機械などを導入する場合には、他の活動を行うことを控えます。

 足場が危険な状態になっていないか

不安定な敷石、通路に散らかったゴミや道具など、足場や通路の危険要素を取り除きます。

ぬかるんだ土地での運搬は極力避けます。

 煙や臭気がたちこめていないか

激しい臭気のする環境で活動をする場合は防臭マスクを着用します。

運搬作業をしているそばでごみの焼却などはしないようにします。

    通路が狭く運搬作業がやりにくいことはないか

家具や畳、泥などを運び出す際あらかじめ運搬通路の幅や距離を十分に確認しておきます。

せまい通路を通らざるを得ない場合は、複数で声をかけ合い、急がずに運搬します。

(2)設備・道具

@安全カバーが取り外したままになっていないか

安全カバーが装着されている道具を使用する場合、カバーを取り外して活動しないようにします。

安全カバーが破損していないかどうか事前に点検します。

    A道具のトラブルが起きていないか

原動機がついている道具や構造が複雑な道具を使用する場合、故障、漏電などトラブルが起きないよう事前に点検します。

古くなっている道具や錆びている道具は活動中の事故を引き起こす可能性があるので活動現場に持ち込まないようにします。

トラブルが発生した時の処理方法がわからない道具は、使用しないようにします。使用する場合は専門家と一緒に行います。

    B使いにくい道具はないか

使用方法のわかりにくい設備・道具は極力使用しないようにします。どうしても使用する必要がある場合は、使用方法についてのオリエンテーションを徹底します。

使用者全員が理解するまで説明を行います。

 2.活動内容
(1)活動条件
     活動手順に不具合はないか

作業手順の進捗がボランティアによってばらばらにならないように徹底します。

練習しても慣れにくい動作で行う活動は、活動方法を見直します。

 A活動で無理な姿勢をとることはないか

無理な姿勢をとらなくてもよいように活動方法を点検します。 

活動内容に合った人員を適切に配置するように努めます。

    B活動に難しいことが多すぎないか

難しい活動はできるだけ専門家や熟練者に任せます。

一人のボランティアに過度に多くの活動が求められることがないようにします。

    C運搬しにくいものを運んでいないか

重すぎるもの、形が不形状のものを運ぶ場合、特定の者に負担がかからないように人数の適正配置を図り、機械や運搬道具の利用も図ります。

運びやすい状態になるように運搬物を細分化します。

 (2)ボランティア
   @視力が弱くよく見えないことはないか

眼鏡が必要な人には必ず眼鏡をかけて活動をさせます。

事前に活動に必要な視力を持っているかどうかの点検をします。

暗順応が低下していないかを調べます。

   A不慣れでよく状況がつかめないことはないか

活動の内容をできるだけ丁寧に説明します。

理解できにくい状況や判断に迷う点を聞き出し、不明な点がないようにします。

   B活動の手順やポイントを忘れることはないか

忘れやすいことを常に相互に口に出し合い、記憶を呼び覚まします。

活動手順の単純化を図ります。

   C注意力が散漫なことはないか

注意力が散漫になっている原因(労働能力、意欲の低下、心配事、対人関係の問題、活動現場の環境など)を突き止め、その解決に努めます。

活動のローテーションを組み、マンネリ化を防ぎます。

   D一人だけの活動で不安を感じないか

できるだけチームで活動ができるようにシフトを整えます。

活動のポイント、手順を丁寧に教えます。

   E能力に問題はないか

活動が遅い、不器用、体力がない場合、そのボランティアに合った活動を担当してもらいます。

熟練者とペアで活動をしてもらうとよい場合もあります。

   F活動を面倒に思っていないか

面倒に思ったり手抜きをしたりするとどのようなけがをするかをよく説明します。

活動の手順や方法に改善する余地があれば改善します。

   G危険意識が低いことはないか

危険箇所や危険要因の周知徹底を図ります。

熟練者に過去の「怖さ」の経験を伝えてもらいます。

 3.管理環境
(1)災害時のボランティアセンター

   @災害時のボランティアセンターでの活動が慌ただしく安全管理に注意が向いていないことはないか

災害時のボランティアセンター内に、安全指導に専任できる人を置きます。

ボランティアセンターで安全活動のオリエンテーションを実施します。

 A安全管理に対して関心が乏しくはないか

2次災害の怖さを周知します。

 (2)活動現場の雰囲気
   @活動現場の雰囲気は良いか

活動前に3分間ミーティングを行い、コミュニケーションを実施します。

お互いに真剣かつ明るく活動をするように努めます。

    Aボランティアとリーダーとの人間関係は良いか

リーダーがメンバーにこまめに声をかけます。

お互いに相手を信頼していることを声に出して伝え合います。 

V ボランティアの健康管理
 水害時の活動は、重労働であるため、ボランティアの健康管理が何にもまして重要です。

 災害時のボランティアセンターによるボランティアの健康管理

 

 ボランティアの自主的な健康管理

 

 災害時のボランティアセンターによる活動時間の管理

 これらの点に注意し、健康管理を行うことが大切です。
1.活動前にボランティアの健康状態を確認する
(1)受付でボランティア一人一人から健康確認カードに記入してもらいます。このことにより健康管理意識の高揚が図れます。
(2)活動に際しては、健康状態の自己管理が重要です。その人の年齢や健康状態にあった活動をしてもらいましょう。
2.活動内容全体について事前にオリエンテーションする
(1)ボランティアに活動の見通しをつけてもらうために、活動内容、活動日数、一日の活動時間を事前に伝えます。活動内容の見通しがつけられることは、ボランティアの精神面に良い影響を与えます。
3.活動時間を管理する
(1)連続的活動は1時間を限度とし、15分程度の休憩をとってもらいます。疲労度に応じてさらに休憩時間を延長するか休憩回数を増やすようにします。
(2)1日の活動時間は1時間の昼食休憩を含めて6時間以内を目安とします。
4.休憩場所の確保・管理をする
(1)活動内容や活動日程に応じた休憩場所を事前に確保します。室温や騒音、臭気、広さなど休憩に不適切な条件の所を休憩場所として設定しないようにします。
(2)休憩場所は常に整理、整頓、清潔を保つようにし、休憩者にもそれを遵守するように徹底します。
(3)活動が終了し撤退する際、休憩場所の撤収や清掃を忘れないようにします。
5.食事と水分の補給に注意する
(1)昼食はボランティア自身が事前に確保し持ち込むことが原則ですが、食事の用意がないボランティアに食事を支給できる用意をしておくことが望ましいでしょう。
(2)昼食は必ずとってもらいます。食事抜きで活動をすることのないようにしましょう。
(3)ボランティア各自の昼食は、休憩場所など清潔な場所に保管してもらうようにし、泥、ごみ、汚物の近くに置かないようにします。夏期はできるだけ涼しい場所に保管します。
(4)飲料水もボランティア各自で用意することが原則ですが、飲料水を持ち合わせていないボランティアへの配慮も必要です。
(5)休憩のたびに水分を十分にとってもらうようにします。スポーツドリンクのような飲み物は水分補給に適しています。
(6)夏期は、熱射病や脱水症状にならないように、水分補給に十分注意します。
6.衣服の着替えに注意する
(1)着替えを多めに持ち、汗をかけばこまめに着替えるようにしてもらうことが望ましいでしょう。
(2)衣服が汚れた場合も、早めに着替えるようにします。ボランティアの活動に使用することが認められている救援物資の中には、活動用に適した古着が多く含まれている場合があります。それらを積極的に着替え用として利用すると良いでしょう。
7.医療体制を整える
(1)ボランティアの健康管理と医療が受けられる専門家(医療機関、保険所等)と連携できることが望ましいでしょう。
(2)活動中に体調の不調を訴えた人には、すみやかに活動から離れてもらって医師や看護婦の診察を受けてもらいます。
(3)活動中にけがをした人も同様です。破傷風などにも注意して傷口の消毒や手当は迅速に行います。

衛生環境の管理

 衛生環境の管理はボランティアの健康管理と密接な関係にあります。水害の被災地は衛生状態が劣悪である場合が多いので、しっかりした衛生管理をする必要があります。
1.防じんマスクを着用させる
(1)活動内容によっては、ボランティアに防じんマスクを着用してもらうことが大切です。特に粉じんが舞い上がる場所でのマスクの着用は徹底します。
2.手洗いの励行を徹底する
(1)休憩に入る時に必ず手洗いを欠かさないように注意を促します。
(2)川の水や溜まった水を使わず、必ず清潔な水と消毒薬で手洗いができるようにします。
3.トイレを確保する
(1)トイレを貸してもらえる場所を確認します。特に女性用トイレの確保には注意を払います。 
(2)トイレとして決められた場所の使用を徹底します。
4.入浴施設を確保する
(1)非衛生な環境のもとでの活動となりますので、活動後に入浴をして服を着替えられるような場所を確保しておきます。
(2)入浴場所を示した地図の掲示などを行い、ボランティア全員に周知します。

5.衛生管理に必要な物品を確保する
(1)タオルなどは常に清潔なものを使うように徹底します。タオルを所持していない作業者にタオルが支給できるようにしておきましょう。
(2)衛生管理に必要な物品はボランティアセンターで備蓄しておくと良いでしょう。
(3)使用済みの物品などは、各自で持ち帰るもの、その場でゴミとしてまとめて処理するもの、焼却すべきものに分別するよう周知します。
6.汚物や腐乱物の処理と管理をする
(1)汚物、腐乱物、動物死体などは、決められた処理方法で処理することを徹底し、勝手に処理をしたり、放置したりすることのないように注意を促します。
(2)汚物が手や顔についた時はすみやかに洗浄することを徹底します。
7.焼却物の管理をする
(1)焼却物は、置き場を決め、必ずボランティアセンタ−でまとめて決められた焼却場へ運びます。
(2)防火管理のためにもボランティアが勝手に焼却するようなことがあってはなりません。

活動時の事故等への処置・手当     

1.事故発生(事実把握)
 事故やトラブルの発生は、いかに早くその実態を把握するかが大切なことであり、救急車の要請など的確な処置がなされるととともに、ボランティアセンターへの通報を欠かしてはいけません。そのときは、「いつ・どこで・だれが・どのように・なにを・なぜ」の5W1Hの原則に基づいた報告を行いましょう。
2.応急処置、報告の手順
 応急処置とは病気やけがや災害から自分自身を守り、けが人や急病人を正しく救助して、医師や他の救助者(救急隊員など)に渡すまでのことをいいます。
 救助者が守るべきこと (救助者は次のことを守らなければならない。)

救助者自身の安全を確保する。周囲の状況を観察し、二次災害の防止に努める。  

死亡の診断は医師に任せます。

原則として医薬品の使用を避けます。

あくまでも医師に渡すまでの応急処置にとどめます。

必ず医師の診察を受けさせます。

 なお、全国の消防署や日本赤十字社で救急法の講習を受けることができます。それらの講習を受けておくことが望ましいでしょう。
3.歯止め
 不慮の事故やトラブルから見を守るには、万全の注意をおこたらないことですが、活動に先立つオリエンテーションの重要性と、活動に際しては、最低2名以上のチームを編成することが重要です。単独行動を控えることで事故の予防ともしもの際の通報が迅速になります。
4.活動再開
 事故やトラブルに対する処置が迅速にとられた場合、活動そのものをすみやかに再開しなければなりません。その場合再び事故を起こさないために、事故やトラブルの原因となった事象を取り除くことと、市民やボランティアへの周知を図らなければなりません。
5.保険
 ボランティア保険は、このような災害時のボランティア活動には、書かせることのできない制度です。活動にあたっては、各自が保険に加入することを積極的に進めることと、ボランティアセンターの機能として、ボランティア保険の受付を行う必要があります。

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