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5章 災害時のボランティアセンターの業務

被害地図の作成
 災対本部より情報を入手し、被害地図を作成し災害時のボランティアセンターに掲示します。
 地図の上に透明のビニールを貼り、そこに活動状況を油性フェルトペン等で記入します。ビニールは、活動状況の変化とともに、新しいものを重ねていくと良いでしょう。地図は、被災規模に応じた縮尺とし、各ボランティアチームの活動場所をピンなどで図上に示し、災害時のボランティアセンターでわかるようにしておきます。活動地域周辺の病院や診療所、救護所もわかるようにしておきます。被害地図と一緒に被災状況、活動状況、活動の終了時期、災害時のボランティアセンターの撤去時期等も掲示します。

活動内容の決定
1.ニーズの把握と活動内容の決定
 第3章で述べた活動内容から、ボランティアの活動範囲を決めます。
 被害状況とともに被災者のニーズも調査し、市町の村災害対策本部と調整して、地域住民、ボランティア、地方自治体それぞれの活動内容を明確にします。一般的に水害には、地方自治体の機能や社会インフラがまったく失われてしまうことはないので、ボランティアがいるからといって活動を無理に作り出すようなことは避けるべきでしょう。
2.活動期間の決定
 最初に活動内容毎に必要な活動期間を設定します。災害時のボランティアセンターを設置しての対応が必要な期間は長期間には及びません。また、被災地の負担を考えると設置期間はできるだけ短期を目指すべきです。活動準備の段階から、地方自治体だけでなく地元で常日頃活動を行っている団体・組織と協議し、災害時のボランティアセンター活動終了後のフォローアップ体制も整えておきます。
3.個別ニーズと現場活動
 最初に決めた活動内容について、活動現場での勝手な判断により変更しないよう徹底しておきます。活動現場と災害時のボランティアセンターとの間で確実な情報伝達手段と伝達方法を確保するとともに、活動現場での裁量の範囲を事前にリーダーに伝えておくことが必要です。活動内容を被災地の状況に合わせて変更することは、ボランティアならではの、臨機応変に特質を活かすことですが併せて、関係機関との十分な調整が不可欠です。安全上、活動の専門性が求められる場合は対象外ですが、対応が可能な個別ニーズについても、活動が広範におよぶ場合は慎重に対応します。いくらボランティアだといっても「他のボランティアはやってくれた。」と言われて、対応能力以上の活動を引き受けることは良くありません
4.住民への活動の広報
 活動内容と期間の決定後、できるだけ速やかに活動内容や受付の場所を記したチラシなどを地域住民に配布します。活動内容を明記することが大切です。早期の支援が必要な人を優先することや、自力で活動できる 人より一人暮らしの高齢者、障害者など社会的弱者を優先すること、危険物・発火物などがある場合には、処理を専門業者に委託すること、別記の活動基準に沿って行うことなども明記しておきます。
5.活動場所の選定や内容の割り振り
 被災者のニーズに基づいて、前日のうちに翌日の活動場所や内容を決めておきます。活動に参加するボランティアの人数が多少変わっても対応できるように活動計画には余裕を持たせておきます。

V ボランティアの受付
1.チームの編成

チームリーダーを決めます。集団活動のリーダーを経験したことがあるかどうか、客観的な視野を持てるかどうか等がリーダーとしての望ましい条件です。リーダーが決まったら、リーダーの仕事を説明し、了解してもらいます。

ボランティアの募集段階で、5,6人でチームを編成することを広報しておきます。

1チームの編成としては重労働に耐えうるボランティア5,6人を基本に、活動内容に関する専門家等支援委員が少なくとも2,3人が加わり、活動内容の遵守の確認等が行えることが望ましいでしょう。家財道具の拭き掃除、家具の再配置など、地域住民と一緒に作業をします。

2.健康確認カードへの記入

ボランティアの方のことを知るのは受付の際しかありません。受付時に、健康確認カードに記入することで、ボランティア自身に健康・安全管理の意識を高めてもらうことも重要です。個人の能力や健康状態に応じて、活動をしてもらうことが必要です。あらかじめ、健康状態に基づく活動基準を災害時のボランティアセンターで決めておくと良いでしょう。特に、心臓病やケガ、その他病気がある人は、活動に参加していいかどうか医師に相談の上、受付手続きをしてもらうことが大切です。医師の指示については活動リーダーに伝えたうえで、基本的には自己管理してもらいます。災害時のボランティアセンターでの受付や後方支援の活動などボランティア体力に合わせて軽作業も用意しておければ良いでしょう。また災害時のボランティアセンターでは医療的な対処をすることが難しいので、医師や看護婦と何かあった際の事前の調整をしておくことが望ましいでしょう。地元の医療機関や日本赤十字社などとの連携を図りましょう。

3.ボランティア保険の登録確認

社会福祉協議会では、原則個人負担によるボランティア保険を平常から受け付けています。ボランティアの受付の際に保険登録の確認や、保険加入ができることが望ましいでしょう。

4.ボランティアであることの証明

ボランティアと地域住民との区別ができるようにすることが大切です。血液型も記入した名札などを作成するのも一つです。これは万が一の事故の際に役立ちますが、ボランティアの安全意識の高揚にも役立ちます。

5.オリエンテーションの実施
被災地で活動するボランティアのために、十分なオリエンテーションを実施しなければなりません。

被災地の地理、気象、防災関係施設の位置、地域の風俗・習慣等への理解

緊急時の連絡先の確認

活動場所、内容、期間等の確認

チーム行動の徹底(個人的行動の戒め)

報告提出の確認

 W 活動内容の概要
1.安全管理の徹底

無理な活動をさせない、がんばりすぎないことが大切です。また、現場は滑りやすいことが多いため、転倒や転落に注意します。事故の防止を活動より優先させます。非衛生な環境下での活動のため、ケガをした場合は破傷風などに感染する危険性もあることに注意する必要があります。事故などがあれば、直ちに病院などに搬送します。

2.広報

ホームページの開設や、マスメディアへの広報、広域連携組織への情報提供などを通じて、災害時のボランティアセンターが設置され、ボランティアの受け入れや活動依頼の受付を開始したことを広報します。終了時期についても、早めに広報します。ホームページでの情報提供は、早さと正確さを確保し、情報の垂れ流しにならないように努めます。情報担当者は、災害時のボランティアセンターの中枢スタッフとなります。いい加減な情報は流さず、情報源も明確にしておきましょう。

3.資機材の調達

家屋敷地内の活動でも、やベルトコンベアー、チェーンソーなどの重機が必要になることがあります。地元の建設事業者などに、操作者と一緒に支援・連携を求めることが望ましいでしょう。トラックは大型より2t以下のものや、軽四輪駆動のものが、過去の経験から小回りが利いて便利です。また、一輪車も大変役立ちます。活動においては、使用したことのない工具等は、事故防止のために使わないようにします。提供資材は、作業終了後の後始末も考えて、要返却、処分可能など条件を明確にしておきます。必要な車両は、被災地周辺でリースができれば良いでしょう。
スコップ、竹ぼうき、ゴムホース、たわし、バケツ、タオル等の消耗資材は、個人からの提供より、民間企業などからまとまった支援が受けられることが望ましいでしょう。

4.活動基準の決定

被災地での活動は非衛生な環境での重労働であり、活動基準の遵守は重要です。活動中は特に次の点に注意が必要です。

心臓発作

 

けが

 

 

脱水症状

けがをした場合は、破傷風などに注意する必要があります。また、安全に活動するために決められた活動基準で活動を行うことを、支援を受ける地域住民にも十分説明しておくことが、トラブルの防止となります。
5.被災住民の作業とボランティア活動との区分

他人の住居に入って行う作業であることの意識を徹底します。大型家具や電気製品などの搬出の際には、所有者の識別ができるようにします。盗難などがないよう、住民やボランティア以外の出入りにも気をつけます。
被災住民の作業の補助がボランティアの役割であり、必ず住民と一緒に活動します。高齢者の方の住居では、本人か関係者の立ち会いで活動します。住民の方に確認をとり、活動前と後とに写真を取ることもトラブルを避ける有効な手段といえます。予定以外の活動を頼まれた場合は、原則として災害時のボランティアセンターと連絡を取ってから対応することとし、現場での安請け合いは慎むようにしましょう。

6.ボランティアの甘えの排除

被災地にいることを認識し、言動に注意し、ボランティアとしてのマナーを守り、自分勝手な行動は慎みましょう。無資格で重機などを使うこともやめましょう。

7.活動終了時の確認

活動が終了した時は住民の方に家屋の内外を確認してもらい、後のトラブルを避けるために、終了書類にサインをもらうと良いでしょう。


X 活動の後方支援

1.活動現場の巡回

活動基準を守っているかどうか活動現場を確認して回ります。活動現場で不足している物資などがあれば補給します。

2.事故時の対応

活動チームには、事故時が発生したら必ず連絡することを徹底します。活動現場からけが人などを医療機関に搬送できない場合や、119番ができない場合には、災害時のボランティアセンターに情報を転送します。事前にボランティアが活動していることを地元防災機関などに知らせておくと、万が一の際に協力を得ることが容易です。

チームのリーダーは、事故時に現場で甘い判断をせず、近くの医師に相談するか、119番をして救急搬送を依頼します。活動前に、活動現場近くの医療機関を確認し、あらかじめ災害時のボランティアセンターから連絡をしておきます。地元保健所とも事前の打ち合わせをしておくことが望ましいでしょう。休日に診療してくれる医療機関についても確認しておきましょう。

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