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第4章 災害時のボランティアセンターの役割
災害時のボランティアセンターとは

 本マニュアルでいう災害時のボランティアセンターは、被災地域に臨時に設置される民間のボランティアセンターを指しています。被災地で活動する諸団体やボランティアの活動にとって、地域の窓口としての役割を担うとともに、主に次のような業務を通じて地域における自発的な活動の総合的な調整を実施する仲介的役割を担います。このようなセンターの機能では、被災者や地域が持つ様々なニーズにきめ細かく対応することが大きな役割であり、地方自治体等の進める全体的かつ公平な救援活動とパートナーを組むことによって、最も効果的な救援活動になると考えられます。

様々な団体・機関による活動などを通じて得られる被災者ニーズの把握

 

ボランティア関連情報の受発信

 

地方自治体等との仲介や調整

 

外部のボランティアの受け入れ

 

諸団体・機関が相互に情報の共有や連携を持つための協議の場の提供など

 被災地では、このような仲介的なボランティセンター以外に、避難所や被災地域すなわち被災現場そのもので活動に当たる団体等が個別のボランティアセンター的機能を有する場合がありますが、ここでいう災害時のボランィアセンターとは、それらとは別に市町村レベルでの仲介・調整の役割を担うボランティアセンターを指しています。

災害時のボランティアセンターの役割
1.ボランティアの調整ということ
(1)ボランティアの受け入れ、情報の提供


 被災地での活動は、個人がバラバラに活動するのではなく、活動内容とボランティアとをうまくつなげて、活動を行う必要があります。このため被災地でボランティアの支援が必要な場合、情報の提供、ボランティアの募集、受付、活動場所へのつなぎやチーム編成、オリエンテーションやミーティングの実施などボランティアの力を無駄なく、活かしていく役割が必要です。

(2)被災地で活動する団体間の情報の共有、協議の場の提供


 災害時には、様々な団体や機関が被災地でそれぞれの理念に基づいて活動しています。しかしこれらの団体が何の連携もなく活動してしまっては、被災者にとっても、団体にとっても決して好ましいことではありません。互いの活動がより生かされ、被災者にとって最も好ましい活動が実現するためには、それぞれの団体が、活動の考え方の交換や有している情報の共有、活動の棲み分けや協働するなど様々な調整が必要であり、そのための場が必要となります。そのような場の提供も、災害時のボランティアセンターの重要な役割となります。

(3)地方自治体とボランティアとのパイプ作り


 地方自治体が被災者全体を対象に実施する救援活動と、ボランティアが個別に展開する支援活動とは、自ずと性格を異にする部分がありますが、両者の活動があいまってこそ、効果的な被災者救援活動が実現するはずです。そのためには相互に活動を補完しあっているという認識が必要ですし、それぞれが有している情報を共有することにより双方の救援活動の質を高めることにもなります。地方自治体とボランティアがパートナーとして両立していくために、その接点となるボランティアセンターの役割は大変重要です。

(4)被災者の支援にとって必要な新たな活動の開発


 実際のボランティア活動そのものに携わると、被災者のニーズ全体を見通すことが難しくなります。活動等を通じて得られた情報の中から、新たに求められる支援活動を状況に応じて計画していくことは、災害時のボランティアセンターとして全体を見通せる立場にあるからこそできる重要な役割です。
2.災害時のボランティアセンターはどのように作られるのか
 被災地域にあって、仲介的な役割を持つボランティアセンターは、ボランティア活動の様々なコーディネートを行う重要な拠点となりますが、その設置については地域によって以下のような様々な形体が予想されます。しかし、当該地域の自治体や諸団体との信頼関係の確立、センター閉鎖に当たっての引継等を考慮すると、センターは地元の諸団体や人材によって運営されることが望ましいといえます。社会福祉協議会や日本赤十字社などが中心となり地域で平常時からセンター設置のための協議を行っている場合は、これらが設置するボランティアセンターに参加するとよいでしょう。

地域内のボランティア団体・市民団体・ボランティア活動推進団体などが中心となって作るケース

 

被災地域内の団体等で災害時のボランティアセンターの設置が困難な場合は、被災地域外の団体等の支援によって設置が進められるケース

 

地方自治体のイニシアティブによって、民間団体を中心にセンターの設置が進められるケース

 3.災害時のボランティアセンターの設置、運営に必要なこと
 災害時のボランティアセンターが設置され、被災地においてその機能を発揮するためには、ボランティアセンターの運営を通じて、ボランティアや活動する諸団体がボランティアセンターとうまく連携し、またボランティアセンターを支援するなどの形が地域の中にできあがることが不可欠です。ここではそのために必要な要件をまとめてあります。(平成11年「広がれボランティアの輪」連絡会議提言「災害救援活動におけるボランティア支援のあり方」から引用)
(1)災害時のボランティア活動の原則
 災害時のボランティア活動は、あくまでも被災者の自立、復旧支援の立場から行われるべきものであって、救援活動を担うボランティア関係諸団体や機関は、この趣旨の下に自らの活動を行い、相互に協力するよう努めることが大切である。
(2)災害時のボランティアセンターの設置
 ボランティアによる救援活動の総合的な調整のため、被災市町村に早期に災害ボランティアセンターを設置する必要がある。
(3)災害時のボランティアセンターの設置と運営
 市町村に設置される災害時のボランティアセンターは、その地域の民間の諸団体が中心になり、外部からの支援活動の受け皿を作り、被災地の住民の意思が反映され、地方自治体の認知を得て設置・運営されることが望ましい。
 災害時のボランティアセンターの設置には、下記のような基本的要件を満たす団体が中心的役割を果たすことが望まれます。

被災地域の諸事情に詳しく、人的、組織的ネットワークを持っていること。

 

被災地の行政機関との信頼関係がある、または作ることができること。 

 

被災地の中で中立的な立場を保つことができること。

 

ボランティア活動についての豊富な知識、経験を有していること。

 

集団や組織のマネージメントができること。

 (4)地方自治体の協働と支援体制地方自治体は、災害時のボランティアセンターの意義と役割を踏まえて、同センターと協働できるような地方自治体側の体制を作る必要がある。また、災害時には地域の実状に即した、民間団体等主導の災害時のボランティアセンターが設置できるよう、常日頃から側面的な支援を提供することが重要である。
(5)災害時のボランティアセンターと他のボランティア団体等との協働
 被災地で活動する民間団体、ボランティア団体等は、災害時のボランティアセンターの役割
 ・機能を認識し、協働することが望まれる。
(6)都道府県レベルで設置される災害時のボランティアセンターの役割
 都道府県レベルで設置される災害時のボランティアセンターは、市町村レベルで設置される
 ボランティアセンターを様々な形で支援する存在として重要である。さらに広域災害においては、複数の市町村のボランティアセンターに対して情報・支援を提供する拠点として重要な役割を担う。
(7)災害時のボランティアセンターの情報集約・共有機能
 より効果的な救援活動が行われるよう、被災地のボランティアセンターは情報の集約・提供の機能を持つ必要がある。発信すべき情報の内容や発信する相手先を慎重に取捨選択し、また外部ボランティアの支援活動のための情報の受発信窓口となるための体制を早期に確立する必要がある。
(8)経理等の透明性の確保
 災害時のボランティアセンター設置・運営資金の提供を受けた場合には、資金の計画的な運用や使途について説明責任が求められる。
V 災害時のボランティア活動の展開とボランティアセンター

1.災害時のボランティアと活動のタイミング
 災害時のボランティア活動がどのように展開されるかは、災害の種類や規模や、災害発生後の時間的経過などにより異なりますが、大まかな流れとして次に示す表のような動きが考えられます。
 災害時のボランティアと活動のタイミング
2.災害時のボランティアセンターの展開例
(1)小規模災害(局所的な風水害や火災等で、住民避難があっても一時的な場合。)
 ボランティア活動が、被災地で小規模に実施されたとしても災害時のボランティアセンターの設置の可能性は低いと考えられます。


(2)中規模局所災害
(比較的大きな災害であるが、被災は市町村内一部の地域にとどまる場合。)
 ボランティア団体等は、災害時のボランティアセンターと連携を密にすることが望まれます。


(3)中規模広域災害
(大きな災害で被害は市町村全域におよぶ場合)
 ボランティア団体等は、災害時のボランティアセンターと連携を密にするとともに、情報の共有等の場を持つことが必要です。


(4)大規模災害(大規模な災害で被害が複数の市町村におよぶ場合)
 複数の被災市町村にそれぞれ災害時のボランティアセンターが設置される可能性があります。さらに市町村間のボランティア活動の支援・調整等を行うために都道府県レベルで災害時のボランティアセンターが設置されることも予想されます。さらにこれらのボランティアセンターの後方支援(人、物、情報等)として、広域的なボランティアネットワークなども加わることが考えられます。


3.災害時のボランティア活動の資金
 ボランティアは、原則的に自己完結ではありますが、中長期にわたる救援活動においては、最低限の活動に伴う経費の負担が生じてくることがあります。特に災害時のボランティアセンターは、情報の集約やボランティアの安全管理など多方面にわたり、運営経費を必要とします。このような場合に、災害時のボランティアセンター独自で資金の調達が必要となります。公的助成や補助金の適用される場合もありますが、災害時のボランティアセンターとして募金活動を行うことも大きな検討課題となります。
(1)支援金
 災害時のボランティアセンターとして募金活動は、被災者に対する義援金との区別をすることです。あくまでボランティア活動に必要な資金を集める趣旨を明確にし、「ボランティア活動支援金」とするとよいでしょう。
(2)募金活動

 募金方法については、マスメディアの利用を含めて、企業や各種財団への支援要請を行うことができますが、被災者に負担となるような広報は控えなければなりません。また、ボランティア活動の後方支援の一例であることから、被災地外でのボランティア希望者への広報は、重要な要素となります。
(3)報告の義務
 ボランティア活動支援金は、特に使途を明確にし、決算報告をしなければなりません。必要に応じて、監査役を選任し公開の場で報告することが望まれます。
(4)義援金との混同
 善意の募金には、被災者への義援金とボランティア活動支援金を区別できない場合があります。寄付された方の意思が確認できない場合は義援金としての対応を優先しなければなりませんが、募金総額の一定の範囲内において、ボランティア活動支援金に充当することが可能となるよう、予めその趣旨を公表することを検討しましょう。

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