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第1章 マニュアルの概要
マニュアル作成の目的 
 日本列島は、毎年台風の通り道であり、大雨や洪水など水による被害を繰り返しています。気象の変化により近年水害は大型化する傾向にあり、多くの尊い生命や財産が失われ、しかも、過去に水害の経験のない新たな地域の被害が増えてきました。極端な降水量の多さや、その結果局地的に引き起こされる大雨や洪水は、今後どこに起こっても不思議ではありません。
 その一方で、水害後の復旧活動が迅速に行われ、住民と多くのボランティアによるめざましい活躍が、大きな力となったこともここ数年強い印象を残しました。
 水害に関しては、これまで水防という視点からの対応策の整備は進んでいましたが、災害時に、住民がどのように対処すればいいのかという点についての取り組みは、十分ではありませんでした。そのために、住民だけでなく救援にあたるボランティアや、情報を提供する立場にある行政機関や専門機関側にも、この点に関するノウハウの整理やその蓄積が行われていないことも分かりました。このようなことから、水害時に住民が対応しなければならない点について、ボランティアはどのように関わればよいのかについてマニュアルをまとめることにいたしました。
 日本の自然災害の中で最も頻繁に起きているのが水害です。このマニュアルが住民の方々の防災対策とともに、ボランティアの皆さんへの水害時の活動の一助となりますことを期待しております。

 ボランティアの概念
  阪神・淡路大震災を契機にボランティア活動が盛んになり、全国各地に災害に備えたボランティアのネットワークも構築されるようになりました。しかしながら、ボランティアの活動に対しての的確なガイドラインとなるべき資料が不足していることは否定できません。このマニュアルでは、水害後の復旧を想定したボランティア活動に一つの指針を示すことを目的としています。また水害被害は比較的地域が限定されることから、地方自治体、消防、警察など公的機関の機能は十分に発揮されたとして、このマニュアルではボランティアの役割とは公的支援を補完する民間支援であるとしてまとめました。なお、この場合の民間支援は次の2つに分類することができます。

 1.地域住民の家族的共助活動
 水害の場合、被災地の範囲が比較的限定される場合が多く、避難所などの施設も地域で事前に認知されており、その地域特有の生活慣習や住民の日常の交流関係をもとに、地域住民の共助活動が中心となることが少なくありません。この場合、近隣の家族的な協力によって、家具の搬出、食料供給、炊き出しなど、お互いの信頼に基づく支援が行われ、かえって、地域外のボランティアが関わることが、地域のコミュニティの秩序を壊すことも考えられます。

 2.地域外ボランティアの支援
 水害の被災地域が広範囲にわたり、被災地での共助だけでは、救援・復旧活動が順調に進まないことがあります。このような場合は、被災地外からの支援の手が必要となり、その支援のために多くのボランティアが駆けつけてきます。これらのボランティアは、地域の実情を知らない不特定多数の者であることから、支援活動の全般にわたって特に被災地に設置される災害時のボランティアセンターの運営についてのマニュアルが必要となります。
  本マニュアルでは、災害時のボランティアセンターの役割と実務について触れています。災害時のボランティアセンターが個々のボランティアやボランティア団体をいかに支援し、それぞれの力が十分に発揮されるにはどのような機能を持つべきかという点について検討しています。さらに、災害時のボランティアセンターがその役割を十分に発揮するための、地域住民の家族的共助活動についても触れています。

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