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全国率先市民みえサミット
第4分科会
「災害と心のケアについて考える」


ゲストコメンテーター 槙島敏治   〈日本赤十字社医療センター第四外科部長〉
コーディネーター 松田千代〈防災ボランティアネットワーク松阪〉

 阪神・淡路大震災の時には、全国からたくさんのボランティアが被災地に駆付け被災した人々を勇気づけ街の復興に大きな役割を果たしたといわれています。また被災住民の方々も、避難所生活の中で互いに支え合い助け合うという状況もみられ、被災初期の時期、人々の心は「命を救う」という目標で一丸となりました。

 しかし、時間がたつにつれ被災された方々のなかにはプライバシーが守れず我慢を強いられる避難所生活に疲れ肉親や家・安定した生活を失った喪失感などが強いストレスとなって、心や体のバランスをくずし病気になったり亡くなる方が沢山いました。

 第四分科会では、長引く避難所生活や時間のかかる復興作業の中で、被災地で活動している人々・被災者やボランティアも含め、精神的な痛手・心に受けた痛み・心の傷に対してどのように対処していったらよいのか、ボランティアとして何ができるかといった視点から、3人のゲストの方々に夫々の体験や思い考え等を話して頂きました。

 上月千代さん(阪神大震災で被災、避難所生活を経験。その後、4年間松阪市で生活。現在、神戸市北区在住。)からは、自宅が全壊し、助けられるまでの間の恐怖感。人間は災害に遭うと善人になり欲もなくなること。避難所生活も始めは感謝の気持ちが強く、遠くから来てくれた人には有難くて涙が出たこと。トイレも一人で行けなくなってスキンシップもしてほしいと思ったこと。しかし、避難所生活が長くなってくると波長が合わない人もいてストレスを感じたこと。
 
 また、松阪での生活の中で地元の防災ボランティアネットワーク松阪(DVNeT松阪)に参加。会員との交流や幅広いネットワークの中で自身の経験を活かして、防災の勉強会や啓発活動にも関わってきたことなど悲惨な状況の中で互いに支え合い助け合って生き抜いてきた貴重な体験を話して頂きました。

 槇島敏治先生(アルバニア・コソボ・トルコなど戦禍や被災地域で国際救援の専門家として活動。その経験から「心のケア」の必要性を痛感され、赤十字の心のケア・プログラムを推進されている。現在、日本赤十字社医療センター第2外科部長・救急部長)からは、ルワンダ難民救援時に自身が受けたストレスの経験から、救援者もかなりのストレスを受けること。したがって救援者だけでなく、救援者であるボランティアにも心のケアが必要であること。ストレス反応は軽いものから専門家の治療が必要とされるPTSD(心的外傷後障害)まで幅が広く、多くの被災者に対して心のケアを行なっていくためには、ボランティアの力が必要であり、そのためにもボランティア自身が「心にケア」の必要性を認識し学ぶことが必要であること。

 ボランティアとしての対応は、
@そばにいてあげるだけでよい。
A相手の顔を見ながら話を聞く(傾聴)。
B相手の悲しみを受け止めようという気持ちで接する。
 ボランティア自身も心の痛みをともにかぶるため、ストレスから自身を守るためには@自分の役割は何であるかを明確にし、過度にならないよう冷静でいられるようにすること。Aストレスの症状を知り、自分自身でチェックすること。また、ストレスに強くなるためには、自分自身に「お前はやれる」と言聞かせ、自分自身のありたい姿をイメージすることであると教えて頂きました。
 
 黒田裕子先生(阪神大震災の時、長年の看護婦経験を活かし避難所で生活を共にしながら被災者の生活支援にあたる。避難所生活のあり方から災害弱者のケアを研究)は、市内の仮設住宅では50~60代の孤独死が多かった。一人の死を通して命の尊さを感じとり、より孤独死を防止するための活動を広めていった。ボランティアをしていることで自分自身の成長があることなど実践の中からお話し頂きました。

 参加者の皆さんからも、体験や実践の中からの疑問や質問が出され、熱の入った分科会となりました。