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福祉NPOと社協等地域の関係団体による連携・協働促進モデル事業報告書
「プラットフォームシステムが
もたらす21世紀型協働のあり方」
(PFシステム論)
三重県上野市社会福祉協議会
上野市ボランティア・市民活動センター
ボランティアコーディネーター
乾 光哉
モデル事業に取り組んだ意図やねらい
プラットフォームという言葉を採用したのは、2000年3月、全社協主催の第14回住民参加型在宅福祉サービス全国研究セミナーで実践報告の依頼を受け、「伊賀上野ふれあいクラブ」の活動を報告するため、全社協職員との打ち合わせの際に飛び出した言葉である。時期を同じくして、旧通産省の「地域プラットフォーム」についてインターネット上で論議をしていた矢先のことであった。
「プラットフォーム」とは、本来「駅で、乗降に便利なように、線路に沿って適当な高さに築いた構築物。ホーム」であり、コンピュータ用語では、「アプリケーションソフトを稼働させるための基本ソフト、またはハードウエア環境」という意味もある。
本来なら仮説に基づいて実践するのが常道であるが、「住民参加型在宅福祉サービスプラットフォームシステム」は、プラットフォームという概念を、「ふれあいクラブ」の実践の中で、自然発生的に具現化されたシステムであるといえる。しかしながら、プラットフォームの考え方は、「伊賀上野ふれあいクラブ」にだけ適用されるものではなく、あらゆるボランティアコーディネート業務、更には福祉マネジメント業務において移植が可能なことから、システム化を目指したわけである。
当初の戦略としては、次の5つのねらいがあった。
・プラットフォームシステムそのものを上野市社協以外の管内社協ボランティアセンターに移植し、福祉NPOと「ゆるやかな連携」関係を構築する。
・プラットフォームの稼働により、住民からの多様なニーズに対応する事ができ、万が一、対応できない場合も、他のプラットフォームにより対応できるようになる。
・NPOにとっても、独自の活動だけでは、信用がなかったり、サービス依頼が少なかったりする場合、プラットフォームに乗ることによって、活動の機会が増える。また、社協が間にはいることによって、それぞれのサービスに対する利用者側の苦情や、担い手側の苦情に対しても受けとめることができる。
・社協の戦略からすると、介護保険事業所として、介護保険対象外者に対し、同等のサービスの提供が可能となったり、介護保険対象者への上乗せサービスとして提供できたりするほか、サービス提供の幅が増大する。
・行政施策との関連では、介護保険はもとより、軽度生活支援事業や、介護予防事業との関連で、公的サービスと組み合わせたり、委託事業として取り組んだりする方向が見えてくる。
取り組みの経過
「プラットフォームシステム」の概念整理
今回のモデル事業では、「プラットフォーム」という概念を、汎用性を持ったシステムとして具現化させることを重点とした。
そのために、初年度はパンフレットの作成を試みた。まずは、プラットフォームの3つの基本的な機能を説明するために、「花畑の図」を作成した。更には、イラストによってプラットフォームをイメージできるように、「プラットフォーム物語」を作成した。
概念の図式化の元となった考え方は、次の通りである。
(1)プラットフォームシステムの概念
プラットフォームシステムの基本的な考え方は、(図1)のようになる。
一見、従来のボランティアコーディネート業務と何ら変わらない流れではあるが、プラットフォーム部分でのコーディネートの仕方に、プラットフォーム独自の特徴がある。

(2)「マネジメント」視点に立ったプラットフォーム
プラットフォームに持ち込まれてきた利用者ニーズの中には、公的制度で対応できるもの、小地域福祉ネットワーク活動で対応できるもの、無償ボランティアで対応できるもの、住民参加型在宅福祉サービスで対応できるもの等、本来最も有効なサービスがあるはずである。こういったスクリーニング(抽出)作業を行うことも、プラットフォームシステムの重要な機能であるといえる。ここでは、一般的な家事援助依頼を例にとって(図2)で説明する。

@公的制度
公的制度とは、このケースの場合、要介護認定を受け要支援以上であれば、介護保険で家事援助サービスが受けられる場合がある。自立判定であれば、軽度生活支援事業の利用が考えられる。
この他、ケース内容によって、他の公的制度を利用できる場合があり、公的制度利用の場合のサービス提供者が、法人やNPOということもあり得る。
介護保険等では、利用者負担があるため、公的制度は優先するものの、利用限度額や利用料により、あえて利用しないという場合も想定される。
A小地域ネットワーク活動
いわゆる見守り活動や、ふれあい・いきいきサロン等、小地域福祉活動として展開している事業や、民生委員活動や地区社協活動で対応できる場合は、それを優先する。
B無償ボランティア
ボランティアセンターに登録している個人ボランティア、ボランティア団体から、最適者をピックアップするという、コーディネートの基本作業である。しかしながら、最近では、家事援助のマッチングをするのが非常に困難な状態に直面している。
C住民参加型在宅福祉サービス
ここが、住民参加型在宅福祉サービスプラットフォームシステムの神髄部分であり、後述のリソース選択によって更なる選択が可能となる。シルバー人材センター等もこのカテゴリに入れてもよい。
D企業
家事援助の場合、企業への送致はほとんどあり得ないが、ディナーサービス等であれば、コーディネート可能な場合がある。今後、コンビニ宅配のような利用しやすいサービスが増加することが予想される。
E他機関への送致
いわゆる「たらい回し」であるが、児童相談所や保健所等、社協で対応が困難なケースは、専門機関に委ねたほうが効果的な場合がある。
Fその他の手段
あえて限定はしないが、福祉教育や生涯学習等での対応が可能な場合も想定される。
G対応不可
いわゆる「門前払い」。できるだけ避けたい選択であるが、利用者側から依頼を断って来るという場合は、それ以上対応できない場合がある。
以上、スタイル別に8つの選択肢を羅列したが、これらは、単独で機能するだけではなく、複合的にコーディネートすることによって、単体では不可能なことも可能になる場合がある。まさに、ケアマネジメント手法そのものであると認識してよい。
(3)「ネットワーク」視点に立ったプラットフォーム
そもそもの「住民参加型在宅福祉サービスプラットフォームシステム」の中核的機能は、単独の住民参加型在宅福祉サービス団体をコーディネートするのではなく、複数の団体を登録し、利用者側の選択によって、団体を選定することにある。住民参加型在宅福祉サービスのコーディネートの場合を例にとって(図3)で解説する。
ここでは、「ふれあいクラブ」という、共通の土台に、様々な有償団体が登録していることがポイントである。その際に、「ふれあいクラブ」自体には、入会金や年会費、及び活動に際して、利用料の一部を事務局経費として上納するという規定が一切ないことが基本となる。一応、1時間700円という利用料の基準は定めてあるが、既存の住民参加型在宅福祉サービス団体には、独自の入会金、年会費、利用料等の設定がある場合が多いため、その設定はそのまま活かした形態で運用している。

@
伊賀上野ふれあいクラブ個人協力会員
通常の住民参加型在宅福祉サービスの基本形である。まず、個人協力会員の中
で、対応できる人を捜すのが優先される。しかし、ニード内容によっては、必ず
しも個人協力会員の中では対応できない場合がある。その際に次の選択ステップ
に移る。
A
伊賀上野ふれあいクラブ団体協力会員(A)
個人協力会員の中に、該当者がなかった場合、団体協力会員の中で選考する。団体協力会員(A)は、従来ボランティアグループで、有償活動も対応しているものとする。この場合、「ふれあいクラブ」の料金設定に準じ、入会金無し、年会費無し、1時間あたり700円の利用料を適用する。
B
伊賀上野ふれあいクラブ団体協力会員(B)
団体協力会員(A)というボランティアグループでは、該当者がなかった場合、団体協力会員(B)に依頼する。この団体は、入会金はないが、年会費が必要で、1時間あたりの利用料が900円であったとする。ここでは、市外在住である該当者が1名見つかった。
C
伊賀上野ふれあいクラブ団体協力会員(C)
更に、別な団体協力会員に打診をしたところ、この団体は、入会金も、年会費もないが、1時間あたりの利用料は1000円だという。しかし、該当者は、利用者の近隣であることがわかった。
ここで、利用者側の選択が必要となる。個人協力会員には該当者はなく、団体協力会員(A)にも該当者がいなかった場合、(B)と(C)の団体協力会員の中で、利用者がどちらを望むかを確認する。その際に選考の基準となるのが、1時間あたりの利用料であったり、該当者の居住地であったり、団体そのもののサービスの質であったりする。今回は、1時間あたりの利用料が1000円であるが、近隣の担い手であるため交通費実費を支払わなくてもよいことから、(C)の団体に依頼をすることになった。・・・という選択が可能になるのである。このように、単なる料金だけでなく、様々な要件が絡み合って、最善のパートナーを選択できることが、プラットフォームの最大の特徴である。
また、最初にコーディネートした担い手が気に入らなかったり、サービス内容の変更に伴い派遣が継続できなくなったりした場合には、別の団体協力会員にケースを引き継ぐことも可能である。
(4)「生活圏域」の視点に立ったプラットフォーム
更なる発展系として、このプラットフォームシステムを広域で実施することによって、ますますコーディネートの幅が広がっていく。いくつものプラットフォームが連携することによって、市町村エリアを超えた無限のコーディネートが実現できるのである。その概念は、(図4)で解説する。

(図4)では、複数のプラットフォームを繋ぐことによって、一つのプラットフォームの限界が、相乗的にカバーできることが見て取れる。概ね、生活圏域のボランティアセンターが、それぞれに独自のプラットフォームを持つことによって、相互乗り入れを可能にすればコーディネートの選択肢は無限に広がると言ってもよい。この点は、公的制度では限界がある部分かも知れない。このエリア選択という概念がプラットフォームシステムに組み込まれることによって、システムはある程度完結される。
また、付加的な効果として、プラットフォームを形成することによって、従来、社協のボランティアセンターにだけしか集まってこなかったニーズが、団体協力会員である住民参加型在宅福祉サービス団体に直接持ち込まれたニーズが、対応不可能のために、プラットフォームにフィードバックされ、新たなコーディネートにより、対応が可能となるケースも想定できる。
しかも、一連のプラットフォームシステムには、コーディネート業務をのぞいては、一切経費がかからないというのも注目される点である。可能であれば、コンピュータによるデータ管理をすれば、更にシステム強化が図られるであろう。
「プラットフォームシステム」の事例整理
2年次の重点作業は、実際にプラットフォームを使って対応した事例の洗い出しであった。特に、今回の委員である管内社協担当者やNPOから事例を提出してもらった。
事例自体は、プラットフォームシステムを意識してコーディネートしたものではないが、伊賀上野ふれあいクラブを使って、管内社協が対応したケースは、その時点でプラットフォーム的に実践したものがたくさんあることがわかった。
「プラットフォームシステム」様式の整備
初年次から様式の整備に関して検討を行ってきたが、ペーパー形式だと、複写やFAXを使ってケースの共有を余儀なくされるため、2年次において、インターネットを使ったフォームの開発に取り組んだ。
結果的に、インターネット上の入力フォームとメーリングリストを組み合わせた、住民参加型プラットフォームコーディネートフォームプログラムの開発に成功した。このプログラムは、インターネット上の入力フォームにニードを記入し送信すると、あらかじめ登録されたメーリングリストのアドレスに一斉送信され、ニードを共有することができる。さらに、プライバシーの保護のため、送信されたメールは、特殊なアプリケーションを使って翻訳しなければ見られないようになっている。また、個人情報を記入しない一般用入力フォームと個人情報を含んだ管理用入力フォームの2種類を用意した。
個人入力フォーム http://www.hanzou.or.jp/form/plat_1.htm
一般用団体入力フォー http://www.hanzou.or.jp/form/plat_2.htm
管理用個人入力フォーム http://www.hanzou.or.jp/form/plat.htm
管理用団体入力フォーム http://www.hanzou.or.jp/form/plat2.htm
一般用メーリングリスト
投稿アドレス: platform-member@egroups.co.jp
グループのURL:
http://www.egroups.co.jp/group/platform-member
管理用メーリングリスト
投稿アドレス:
platform-manager@egroups.co.jp
グループのURL:
http://www.egroups.co.jp/group/platform-manager
「プラットフォームシステム」構築マニュアルの作成
当初は、三重県社会福祉協議会によって、初年次に作成したパンフレットを正式に印刷製本してもらう予定だったが、三重県社会福祉協議会が、急遽、パンフレットではなく、構築マニュアルを作成するということになり、マニュアルの作成にあたり、委員会で検討してきた事例や、プラットフォームシステムそのものの経緯や展望について情報提供した。
完成品については、三重県社会福祉協議会版が1,000部、上野市社会福祉協議会版が1,200部作成され、関係機関に配布した。
突然のマニュアル作成であったため、まだまだ不十分であるため、さらなる改訂の必要性がある。
「プラットフォームシステム」の周知
プラットフォームシステムの住民への周知に関しては、全国の学会発表から始まり、県レベルのシンポジウムを経て、管内住民向けのシンポジウムを開催した。委員会開催を含めた事業の経過は下記の通りである。
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月 日 |
内 容 |
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平成12年
10月14日 |
住民参加型在宅福祉サービスシンポジウム
第1回住民参加型プラットフォームシステム委員会(15名出席)
・モデル事業の説明
・事業計画の検討
・連携可能NPOの選考
・様式の検討 |
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11月6日 |
全社協第1回拡大委員会(福祉NPOと社会福祉協議会との協働に関する研究委員会)
・事業説明 |
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12月5日 |
第2回住民参加型プラットフォームシステム委員会(11名出席)
・共通パンフレットの作成
・プラットフォーム概念の整理 |
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平成13年
2月14日 |
第3回住民参加型プラットフォームシステム委員会(12名出席)
・プラットフォーム概念のまとめと最終修正
・パンフレット作成に向けての方向性 |
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2月21日 |
三重県社協が、住民参加型在宅福祉サービス実施団体連絡会議を開催(協議会設立に向けて動きだす) |
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2月23日 |
住民参加型在宅福祉サービスプラットフォームシステム論文完成
「地域福祉を拓く(全5巻)」仮称に、実践例として執筆
(株)ぎょうせい |
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3月12日 |
ヒヤリング(全社協・日本総研) |
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3月19日 |
山田編集事務所パンフレット打ち合わせ
・構成、デザイン等の打ち合わせ(A4カラー12ページ、PDFファイルで製作) |
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3月21日 |
全社協第2回拡大委員会(福祉NPOと社会福祉協議会との協働に関する研究委員会)
・中間報告 |
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4月25日 |
第4回住民参加型プラットフォームシステム委員会(10名出席)
・パンフレット最終校正 |
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6月9・10日 |
日本地域福祉学会宮崎大会自由研究発表 |
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6月26日 |
第5回住民参加型プラットフォームシステム委員会(12名出席)
・高橋紘士先生を迎えて |
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7月13日 |
住民参加型在宅福祉サービス団体・市町村社協ボランティアセンター連絡会議(約50名参加) |
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9月19日 |
全社協第3回拡大委員会(福祉NPOと社会福祉協議会との協働に関する研究委員会)
・12年度事業報告と13年度事業計画 |
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9月26日 |
第6回住民参加型プラットフォームシステム委員会
・住民参加型プラットフォームコーディネートフォームプログラムの検討
・住民参加型プラットフォーム事例集の検討 |
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12月21日 |
第7回住民参加型プラットフォームシステム委員会
・住民参加型プラットフォームコーディネートフォームプログラムの検討
・住民参加型プラットフォーム事例集の検討 |
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2月15日 |
第8回住民参加型プラットフォームシステム委員会
・住民参加型プラットフォームコーディネートフォームプログラムのデモンストレーション
・住民参加型プラットフォーム事例集の検討
・全社協&日本総研のヒヤリング
・住民参加型在宅福祉サービスシンポジウムの打ち合わせ |
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2月16日 |
住民参加型在宅福祉サービスシンポジウム 120名参加 |
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3月22日 |
平成13年度在宅福祉推進セミナーシンポジスト参加 |
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6月16日 |
日本地域福祉学会第16回大会シンポジウムシンポジスト参加予定 |
また、上野市社会福祉協議会公式ホームページ「HANZOU−NET」に、パンフレットおよび、構築マニュアルの内容を掲載し、全国どこからでも閲覧できるようにした。
http://www.hanzou.or.jp/platform/index.htm
更には、上野市社会福祉協議会広報誌「福祉うえの」平成14年3月号において、住民参加型プラットフォームシステム構築マニュアルに関する記事を掲載し、上野市住民へ全戸配布した。
評価(成果および課題)
「プラットフォーム」は新しい「協働」の扉を開ける呪文のようなもの
2年間のモデル事業で「プラットフォーム」について概念整理をし、事例研究をした結果、そもそも、「プラットフォーム」って何なのかという疑問が膨らんできた。その中で、すでに「協働」という言葉が全国的に認知され、同様の概念として「コラボレーション」なる言葉も取りざたされるようになってきた。「協働」=「プラットフォーム」と考えるには、既成の「協働」の考え方が、安易な連携や、名目上のネットワークにとどまってしまって、機能を発揮できない場合が少なくない。その際に、「何かわからないけれど、従来の協働ではない、新しい協働のスタイルの総称」として「プラットフォーム」と名付けることで、付加価値を持った新しい協働システムが構築できるのではないかという結論に至った。
しかしながら、単なる呪文として片づけてしまうのは尚早であるため、協働の新概念をシステマティックに体系づけるための検証を行った。
「プラットフォーム」の特徴
前述のプラットフォームの3つの視点は、プラットフォームシステムの基本的な特徴であるが、事例検討を進めていく中で、様々な付加的効用が見えてきた。
最大の特徴は、従来の形式的な登録ではなく、プラットフォームという同じ土俵に一定の意識を持って乗るということ自体が、プラットフォーム参加団体やコーディネート機関の担当者の意識変革をもたらすのである。
プラットフォームが稼働するにつれ、「選択性」や「即応能力」は、参加団体が増えれば増えるほど向上し、広域化すればするほど、活動エリアが広がることになる。特に、移送サービスや引っ越しなどといったケースの場合、きめ細やかなコーディネートが可能となる。
さらに、当初は思いも寄らなかった効果を見いだすことができた。その3つの効果とは、
1.モニタリング効果(相互監視機能)
社協が間に入ることで利用者と担い手の両者からのクレームに対処できる。
2.インクルージョン効果(人材の再編成)
本来別の目的で活動している人を養成することにより新しいミッションを組織できる。
3.エンパワーメント効果(地域福祉力の向上)
自分の住んでいる地域で対応できなかったケースに対し、他地域に頼るのではなく、自分たちで解決できるように地域住民の参加意識が高まった。
また、プラットフォームシステムの稼働に関しては、これといって経費がかからず、従来型のコーディネートに比べて、かなりの効率化が図られることがあげられる。地域性の相違はあるものの、考え方自体は、全国どこでも予算的な措置をしなくても導入することができる。
「プラットフォーム」の構築に立ちはだかる障壁
一方、プラットフォームシステムを取り入れるにあたって、「現実はそんなにうまくいかない」「プラットフォームなんて机上の理想論だ」という意見もある。では、どうしてプラットフォームシステムが導入できないかを検証した結果、次のような障壁が判明した。
1.近代的ボランティア観
「ボランティア活動は無償でなければならない」とか、「有償で活動する団体とは一緒にしたくない」といったボランティア団体では、有償によるサービス提供をするには抵抗がある。
逆にいえば、近年台頭してきた市民活動団体やNPO法人は、従来の無償ボランティアとは違った価値観で活動している。しかも、協働するというのではなく、全く別の活動であると割り切っている。
2.縄張り意識
住民参加型在宅福祉サービス団体の多くは、社協のボランティアセンターに登録せずに、独自の活動をしていることが多いため、自分のテリトリーを守るため、プラットフォームに参加しない。これは、ボランティア団体にも同様にいえる。
3.後退的連帯感・活動の硬直化による柔軟性の欠如
活動がマンネリ化している団体は、現状の維持に勢力を注ぎ、前進的な発想が欠如している場合がある。このような状況では、プラットフォームへの参加を決意するのは難しい。マンネリ化を打開する方策としてプラットフォームへの参加を視野に入れてもらいたいものだ。
4.お役所的協働イメージ
プラットフォームへの参加にしても、協働するという認識にしても、従来のお役所的な発想では、形式にとらわれてばかりで柔軟な対応ができない。形式にこだわるのではなく、困難ニードをいかに解決するかということを重点に考えることがプラットフォームを成功させる鍵だと考える。
5. コーディネーター不在
プラットフォームを推進して行くには、ボランティアセンターにも、住民参加型在宅福祉サービス団体にも、ボランティア団体にも、その意味を理解するコーディネーターの存在が不可欠である。プラットフォームを運営して行くにあたって、キーパーソンとなるコーディネーターの存在が、成功の鍵を握っている。
「プラットフォーム」の展望
プラットフォームシステムの神髄は、「プラス思考のゆるやかなぶつかり合い」である。モニタリング機能を生かして、マネジメント能力を高めること。インクルージョン効果により、人材の再編を試みたり、新しいミッションを生み出したりすること。地域間格差の是正のために、住民のエンパワーメント効果を醸成すること。これらが一体となることにより、本来のプラットフォームが全く新しい創造的機能を誕生させる。
市町村合併がクローズアップされている今日、一足お先の合併をプラットフォームという仮想のエリアにおいて実現することができる。更には、地域福祉計画策定における協働のあり方の中軸としてプラットフォームを位置づけることにより、計画に裏付けされた事業展開をはかることが可能になる。
今回のモデル事業においては、住民参加型在宅福祉サービスに特化して研究を進めてきたが、プラットフォームは住民参加型在宅福祉サービスに限定するものではない。例えば、NPOプラットフォーム、小地域プラットフォーム、福祉教育プラットフォーム、災害救援プラットフォーム等、様々な分野で導入することができる。更には、それぞれを統合することによって、「地域福祉プラットフォーム」という総合的なプラットフォームの確率へとつながっていくのである。
少なくとも、このプラットフォームシステムの手法は、阪神大震災のような大規模災害が発生した時に、遺憾なくその威力を発揮するだろう。そのために、私たちは、「より深く、より広く、より多く、より細かく、より強い」プラットフォームシステムを構築していかなければならない。
これこそが、21世紀における新しい協働のシステムであると考える。 |